■ イダゴ墓

 
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 津軽石の根井沢さ、トヅ(橡)の大木が、立ってっぺ。
 その根もどさ、お墓っこが、あんだ。
 お墓には、「神女」っつー文字が、刻まれでる。
 これはさ、イダゴさんを葬った、墓っこだ。
 イダゴ墓ど、呼ばれでる。

 昔むが~すの話っこだ。
 根井沢のトヅの大木には、天狗が住んでだった。
 近くの家に、ちっちゃけえ女ごわらすがいだった。
 女ごわらすは、よぐ、トヅの実っこをひろって、遊んでだった。
 とごろがさ、ある日のこったあ。
 女ごわらすが、夜(よ)んまなっても、家さ帰ってこねえ。
 とうとう、そのまま、行方が、わがんなぐなってすまった。
 村の人がどうは、噂しあった。
「神隠しだあべ」
「天狗に、さらわれだんだあべ」
 女ごわらすが、いんなぐなってから、ちょうど三年三月と三日になる日だった。
 ひょっこりど、女ごわらすが、家さ帰ってきた。
 どこさ行ってだんだが、なにがあったあもんだあが、女ごわらすは、なんにも喋んながった。
 ただ、帰ってきたとき、手さ、赤(あげ)え石っこを、ひと~づ、握ってだった。
 そうして、手ぇ開いで、ひとごど喋ったもんだ。
「イダゴ石だあが」
 天狗に、もらったんだあべな。
 女ごわらすは、それがら、イダゴになった。
 イダゴっつーのは、ほれ、ホドゲ降ろすっつーて、死んだ人の霊ぇ、わが身にとりつかせる。
 口寄せっつーて、死者の言葉ぁ伝える。
 占いごともする。
 女ごわらすが、イダゴ石ぃ手にすて、歌っこでも歌うように、まじないごとをとなえる。
 そうすっと、いろんなことを言いあでるようになった。
 近所じゅうで評判になった。
 評判を聞ぎつけで、遠ぐからも、占ってもらうべーど思って、いっぺえ人がやってきた。
「ご信仰せんすっけえに、お守(まぶ)れってくださんせ」
 そういう、取り巻ぎみってえな信者が、何人もでぎだ。
「根井沢のイダゴさま」
 そう呼ばれるようにもなった。
 根井沢のイダゴ墓っつーのは、そのイダゴさまの、お墓っこなんだあどさ。

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by miyako_monogatari | 2009-06-09 09:11
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