■ 柿入道


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 子どものころ、こんなはなしを聞いた。
 たそがれどきに、柿の木のかげから大入道があらわれる。
 大入道は、お坊さんのすがたをした大男だ。
 大男は町なかを、ぶらぶら歩いていく。
 歩きながら、手にした桶(おけ)から柿の実をぽとぽと落とす。
 そうして、ふたたび柿の木のあたりにもどると、すぅーっと消えてしまう。
 お寺の小僧さんが留守番をしていた。
 そこへ、顔をてかてか赤くてからせた大男がやってくる。
 「酔っぱらいの大入道か?」
 小僧さんは首をかしげた。
 大男は手に桶をさげている。
 小僧さんの目のまえにきた。
 くるり尻をめくった。
 そうして、桶いっぱいに、びりびりとくそをした。
 その桶を小僧さんの目のまえに突きつけて真っ赤な顔でにらむ。
 「食えっ、食えっ、食えーっ」
 食べないと、どんなひどい目にあうかわからない。
 小僧さん、目をつぶって口をつけた。
 そしたら甘くてうまかった。
 小僧さん、すっかり平らげてしまった。
 大男は桶を手にして帰っていく。
 小僧さんが、あとをつけた。
 大きな柿の木のあたりにくると、すぅーっとすがたを消してしまった。
 小僧さんは柿の木を見あげた。
 皮だけになった柿の実が、風に揺れている。
 いくつも、いくつも、ふらふら、ふらふら。
 そのうち、この大入道は、柿入道と呼ばれるようになった。


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by miyako_monogatari | 2009-02-25 06:59
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