■ 頭に柿の木


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 子どものころの話だ。
 家で柿を食べていた。
 かあさんが言う。 
 「種を飲みこんだら、頭から柿の木が生えてくるよ」
 かあさんの目は笑っていた。
 種は飲みこまないように気をつけなさい――
 そんな冗談まじりの注意だった。
 柿の種ばかりじゃない。
 さくらんぼ、ぶどう、すいか……
 種は、飲みこんじゃいけない。
 はきだすんだよ。
 かあさんのことばをときどき思い出す。
 「頭から柿の木が生えてくるよ」
 すると、頭のてっぺんがむずむずする。
 かあさんは、こんな話もしてくれた。
 むかし、お酒の好きな男がいた。
 酔っぱらって柿を食べて、種を飲みこんでしまった。
 すると、頭のてっぺんから柿の木が生えてきた。
 頭の柿の木は、どんどん大きくなった。
 いっぱい赤い実をつけた。
 もいで食べてみたら甘い。
 よろこんだ男は、村の入口にある、もっきり屋に行った。
 もっきり屋というのは、お酒を売る店だ。
 湯飲みに盛りきりのお酒を、一杯ずつ売る。
 男は、おかみさんに柿をあげて、お酒をもらった。
 一杯のお酒を飲み終えると、また柿をあげて、もう一杯お酒をもらう。
 そのうち酔っぱらって寝てしまった。
 すると、寝ているあいだに、頭の柿の木を、だれかに引っこ抜かれた。
 男の頭に、ぽっかりと大きな穴ができた。
 男はとぼとぼ歩いて帰った。
 雨が降ってきた。
 頭の穴に雨がたまって池になった。
 男が池に手をつっこんでみた。
 大きな魚が何匹も泳いでいる。
 鯉だった。
 よろこんだ男は、もっきり屋へ行った。
 おかみさんに鯉をあげて、またお酒を飲んだ……
 まだまだ続きがあったけれど、忘れてしまった。
 お酒飲みは、どうしようもない――
 きっと、そんな話だったと思う。

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by miyako_monogatari | 2009-02-25 05:06
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