■ 小野小町


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 江戸時代の旅行家で随筆家の菅江真澄(すがえ・ますみ)――
 この人の書いた多くの紀行文のなかに、「小野のふるさと」という一篇がある。
 小野というのは、日本一の美女ともいわれる小野小町(おののこまち)のことだ。
 紀行文のなかで菅江真澄は、小野小町が宮古に住んでいた、という短い話を書きとめている。
 小町は、小野良実(よしざね)という出羽国(でわのくに)秋田の郡司の娘だった。

 ――小野小町は、おさないときに人に盗まれ、みちのくの宮古に住んでいた。
 わが子がいるとは夢にも知らないで、小野良実は宮古をおとずれた。
 そうして、いままで目にしたこともなくみやびな、若い女をみかけた。
 自分の娘なのだけれど、良実は気づかない。
 恋心をいだき、夜をともにして行く末を約束し、宮古を離れた。
 あとになって小町は、良実が自分の父親だということを知った。
 「わたしは実の父とちぎった世にもまれな罪人だ」
 小町はそう思いつめて嘆き悲しんだ。
 けれど、とり返しはつかない。
 かわりに、それから世間の男とはだれも、露ほどのちぎりをも結ばなかった。
 この物語には、小町の詠んだという、ひとつの歌が思いあわせられる。

  おきのゐて身をやくよりも悲しきは
       みやこ島べの別れなりけり


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by miyako_monogatari | 2009-02-09 20:58
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