■ 黒森のオロチ


a0115014_2434270.jpg 黒森山(くろもりやま)は、親しみをこめて「黒森さん」と呼ばれる。

 この黒森さんに、赤龍(さくりゅう)の池があった。
 水が涸れて、いまはない。

 赤龍は、神龍とも呼ばれる。
 その正体は、オロチ、つまり大きな蛇のことなのではないかといわれる。
 
 オロチについては、こんな話が伝わっている。
 黒森さんには五、六丈の大きな蛇がときどきあらわれる。
 神社の本殿にとぐろを巻き、そばの垣根や末社のほこらをとり巻いている。
 見た人を驚かすけれども、決して襲ってくるわけではない。

 こんな話もある。
 黒森さんには、五色のいろどりも鮮やかに、四角いまだら模様をもったオロチがたくさんいる。
 なかには四つ足をもち、頭にツノを生やしたのがいる。
 これは大蛇といってもオロチではなく、ミズチと呼ばれるものらしい。

 本殿の屋根が長年の風や雨や雪にさらされて腐り、雨もりがひどくなったので、銅板でふきかえられた。
 そのときオロチがあらわれたのを見た人がいる。

 もっと最近の、もっとくわしい目撃譚はこうだ。
 拝殿のわきに一本の桜の木がある。
 拝殿にめぐらした廊下に、オロチがとぐろを巻いていた。
 驚いて見ていると、ぬっと鎌首をもたげる。
 のろりそろりと回廊の手すりから桜の幹にのびていく。
 頭が桜の木にとどき、やがて太い胴で幹を巻きはじめた。
 ところが、尻尾のほうは、まだ拝殿にとぐろを巻いていた。

 オロチは黒森神社のお使いとも、ご本尊そのものともいわれる。
 祭神はオオナムチノミコト、スサノオノミコト、イナダヒメの三柱だ。
 といっても、そうなったのは明治の維新後のこと。
 そのまえの、もともとのご本尊は、高さ30センチほどの木像だった。
 木像は、いまでも本殿のまんなかに安置されている。

 けれど、これも表向きの話。
 じつは、その真下の土中ふかくに、ご内神さまが眠っている。
 のぞくことができないよう、社殿の下は厳重にかこわれている。
 このご内神さまというのが、赤龍とも神龍とも呼ばれたオロチなのではないか――
 そんなふうにもいわれている。


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by miyako_monogatari | 2009-02-07 13:47
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