■ デエゴ泥棒


 むかし、ひとりのおばあさんがいました。
 浜べで畑をたがやし、デエゴ(大根)の種をまいて、たいせつに育てていました。
 秋が過ぎ、寒い北風が吹くころです。
 デエゴも大きくなりました。
 「そろそろ採って売りさいぐべーが」
 おばあさんは、ある朝、モッコ(背負い籠)をかついで畑にやってきました。
 すると、大事なデエゴが何本も引きぬかれ、丹精こめた畑が荒らされていました。
 「憎たらすぅごどぉ~!
 だれが盗ったぁべ?」
 つぎの日、朝早くから、おばあさんは、かたわらの藪(やぶ)のかげに隠れて畑を見はっていました。
 やがて、磯のほうから、なにかがやってきます。

a0115014_3334879.jpg

 それは、大きなタコでした。
 おばあさんは腰が抜けそうになりました。
 それでも、じっと我慢して、大ダコのようすをうかがっていました。
 大ダコは、おばあさんの畑に入りこみました。
 長い腕が伸びました。
 と思ったら、デエゴにくるくると巻きつきます。
 そうしてデエゴを引きぬきました。
 長いながい腕にかかえると、小おどりするように海へ戻っていきました。
 おばあさんも、あたふたと家に帰りました。
 家のものや村の衆に、畑でのできごとを話しました。
 「ばばあ、ぼげだぁが?」
 「ほんとだでば!
 だれがいっしょに来て、見でけろ」
 おばあさんは言いつのります。
 信じられないような話でした。
 でも、ふだん嘘をつくようなおばあさんでないことは、みんなよく知っています。
 つぎの日、家のものや近所の人たちが、藪のかげから、おばあさんの畑のようすをうかがうことになりました。
 すると、おばあさんの話したとおりに、海から大ダコがあらわれました。
 デエゴを引きぬき、長いながい腕にかかえたまま、海へ帰っていきます。
 それから、みんなで畑のデエゴを引きぬいて、家に持って帰りました。
 でも、おばあさんは、すっかり抜いてしまうことはやめました。
 またやってくる大ダコのために、少し残しておいたのです。
 この話は、すぐに村じゅうに広まりました。
 どうやらタコは、デエゴが好きらしい――
 それからというもの、このあたりの漁師たちは、タコ釣りの餌にデエゴを使うようになったのだそうです。


                 宮古 on web
[PR]
by miyako_monogatari | 2009-02-05 16:48
<< ■ カツギの辰 ■ 大うなぎ >>