■ 大うなぎ


 古い話っこだぁが。
 十五、六の娘っこが家でひとりで留守番してだった。
 すると、どんどんど戸をたたく音がする。
 ――だれだぁべ?
 そう思って、戸を、ちょぺぇっこ開けてみた。
 そこには見たこともない、びちょんこの若い男が立ってだった。
 「なんだぁべ?」
 驚いた娘っこが、ちっちゃけえ声で聞いた。
 すると、若い男は、
 「宿を借してけんねぇべぇが」
 って喋ったぁもんだ。
 親もいないときに、びちょんこの、知らない男を、まさか家さ上げるわけにはいかない。
 娘っこは断わった。
 そうしたら、若い男は戸を開けて家のなかさ入ってこようとする。
 驚いた娘っこは、手にしていた針を若い男の胸さ向けた。
 針は簡単に突き刺さってしまった。
 娘っこは、ちょうど着物をすとねで(繕って)いたところだった。
 若い男は、声もあげないで逃げでった。
 陽が落ちて親が帰ってきた。
 話を聞いたおとっつぁんも驚いた。
 つぎの朝早く、村の人がどうど糸をたどってみた。
 糸は、どんどんどんどん、となりの村の沼までつづいでだった。
 荒谷(ありや)沼っつう名前だった。

a0115014_3461416.jpg

 糸の先には丸太のようにふってぇうなぎがいた。
 その大うなぎは、はぁ死んでだった。
 「ありや~!
 でっけぇうなぎだぁが」
 「なんでこんなんのが男さ化けて家まで来たぁべ」
 みんなで、ああでもない、こうでもないと喋りあった。
 なにもかにも、わげつがほうでぇで、わからない。
 大うなぎは、気味が悪いから、沼さ投げどいだ。
 そしたら、腐って、なくなった。
 荒谷沼には昔っからうなぎがいっぺえいだった。
 そのときから一匹も獲れなくなった。
 そして、いつのまにか水が涸れた。
 跡には草がぼうぼうど生(お)えだ。
 いまでは、どこが沼だかなんだか、わげつがほうでぇになってしまったっつう話っこだ。


                 宮古 on web
[PR]
by miyako_monogatari | 2009-02-05 15:01
<< ■ デエゴ泥棒 ■ トクサ畑で >>