■ トクサ畑で

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 昔むかし、よく釣れると評判の、ツノ屋があった。
 ツノ屋は、スルメ(イカ)を釣るときに使うツノをつくって売る。
 ツノは餌の代わり、ハリの代わりだ。
 ツノをつけた糸を海におろす。
 すると、餌だと思ってスルメが抱きつく。
 そこをすかさず釣りあげるわけだ。
 ツノは鹿や牛などの角を磨いてつくる。
 磨くのにトクサを使った。
 ツノ屋の裏には、広いトクサ畑があった。
 ある晩のことだ。
 下働きの男が夜ふけに目をさました。
 ――ミシッ、ミシッ
 足音がする。
 縁がわを見たら、見たこともない大男が背中をまるめて歩いている。
 「泥棒ッ!」
 寝ていたツノ屋の人たちは飛びおきた。
 大男はトクサ畑へ逃げこんだ。
 騒ぎに気づいたとなり近所の人たちも集まってきた。
 みんなでトクサ畑をとりかこむ。
 そうして、石ころや棒木を手当たりしだいに畑へ投げつけた。
 泥棒は広い畑のなかを逃げまわる。
 そうこうしているうち、あたりが白みはじめた。
 みんな、目をこらして畑を見た。
 泥棒のすがたが見当たらない。
 畑に入って探した。
 トクサをかきわけてみたが影も形もない。
 「おがすうな?
 畑から逃げだぁはずはねえ」
 首をかしげながら、そう話しあっていたときだ。
 下働きの男の足もとで蚊の鳴くような声がする。
 「痛でぇ~!
 痛でぇ~~!
 踏んづげんなぁ~!
 踏んづげんなぁ~!」
 足もとを見ると、親指ほどの小さな男が草履(ぞうり)に踏まれている。
 ひょいとつまみあげた。
 どうも、泥棒に入った大男のようだ。
 「ありゃ?
 なんだべ??
 こんなに、ちっちゃぐなって!」
 みんなびっくりした。
 泥棒は小さくなった体をますます縮めて震えていた。
 トクサ畑のなかを一晩じゅう逃げまわって、さすがの大男も磨りへってしまったのだった。
 とっぴんぱらりん、ぷう~


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by miyako_monogatari | 2009-02-05 08:43
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