■ スネコタンペコ



a0115014_5524159.jpg 昔むかし、子どものいない、じいさま、ばあさまが、おりました。
 だんだん年をかさねるにつれて、ふたりは、寂しい思いをいだくようになりました。
 ふたり並んで、神棚に手をあわせて、おがみました。
「どんなわらす(子ども)でも、かまわねぇ。
 ひとぉ~り、授けてくださんせ」
 じいさま、ばあさまは、毎日まいにち、おがみつづけました。
 百日めになった日のことです。
 おがみ終えると、ふいに、神棚の奥から、しわがれた声が聞こえてきました。
 じいさま、ばあさまは、びっくりして、ふたりいっしょに、腰が抜けそうになりました。
 それでも、神棚の奥から聞こえてくる声は、こんなことを言っているのだと、わかりました。
「ばあさまのスネコさ、タンペコつけて、ポンと、はたけ!
 ばあさまのスネコさ、タンペコつけて、ポンと、はたけ!」
 スネコというのは足の脛(すね)、タンペコというのは、唾(つば)のことです。
 じいさま、ばあさまは、ふたりして顔を見あわせました。
 それから、ふたりして同じことを、つぶやきました。
「はて、妙な?」
 それでも、これは神さまのお告(つ)げにちがいない、と思いました。
 言われたとおりにすれば、きっと、わらすが授かるにちがいない、と思いました。
 じいさまは、手のひらにタンペコつけると、ばあさまのスネコにつけました。
 それから、その手のひらで、ばあさまのスネコを、ポンと、はたきました。
 ばあさまも、じぶんの手のひらにタンペコつけて、じぶんのスネコにつけました。
 それから、その手のひらで、じぶんのスネコを、ポンと、はたきました。
 すると、みるみるうちに、ばあさまのスネコに、ポンと、タンコブができました。
 そうして、タンコブから、親指ほどの、小さな小さなわらすが生まれてきました。
 じいさま、ばあさまは、大よろこび。
「スネコさ、タンペコつけたら生まれたわらすだっけえ、スネコタンペコだ!」
 そう言って、大切に育てました。
 でも、いつまでたってもスネコタンペコは大きくなりません。
 ある日、スネコタンペコは言いました。
「おとぉ、おかぁ。
 おらぁ、嫁っこを探して、くっけぇ。
 おらに、コウセン(香煎)と、針っこと、それから馬っこを、くださんせ」
 コウセンというのは、麦こがしです。
 麦を炒ってから臼(うす)でひいた粉のことです。
 じいさま、ばあさまは、これを聞いてびっくり。
 それでも、スネコタンペコの言うとおりに用意してやりました。
 スネコタンペコは、コウセンの入った袋をふところに、針っこを背に、馬っこの耳のなかに入って出発しました。
 日の暮れるころになって、大きな村の、長者どんの、お屋敷のまえまできました。
 スネコタンペコは、馬っこからおりて頼みました。
「どんな隅っこでもいいっけ、泊めてくださんせ」
 長者どんは、小さな小さなスネコタンペコをめずらしがって、お屋敷に上げました。
 お屋敷には、女ばかり、三人の子どもがおりました。
 その夜なか、スネコタンペコは起きだして、いちばん下の娘の部屋へ忍びこみました。
 そうして、眠りこけた末娘の口のまわりに、そぉっと、コウセンをふりかけました。
 朝になって、長者どんは、スネコタンペコの大きな声で目を覚ましました。
「おらの大事なコウセンを、バッツコさんに食われだぁ」
 そう言って泣いているのです。
 バッツコさんというのは、末の娘のこと。
 見ると、たしかにバッツコさんの口のまわりは、コウセンだらけです。
 長者どんは言いました。
「人さまのものに手ぇつけるような悪い娘なら、ぼんだしてしまうべぇ!」
 バッツコさんは、お屋敷から、ぼんだされてしまいました。
 スネコタンペコも、バッツコさんのあとについて、お屋敷を出ました。
 そうして、馬っこの尾っぽに飛びついてぶらさがると、馬っこのケツっこを、針っこで、プスリと刺しました。
 馬っこは跳びはね、スネコタンペコは地面にボンと、たたきつけられました。
 すると、スネコタンペコの体が、みるみる大きくなっていきます。
 そうして、とうとう、りっぱな若者になりました。
 スネコタンペコは、バッツコさんを馬っこに乗せ、家につれて帰りました。
 それから、じいさま、ばあさまと四人で、仲よく暮らしましたとさ。
 めでたし、めでたし。


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by miyako_monogatari | 2009-02-04 14:44
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