■ 夜這い仁王


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 長根の寺に一対の仁王がおった。
 もとは赤竜寺の山門を守っていた仁王だ。
 赤竜寺というのは、北の黒森さんにあった。
 仁王は権現さまに近づく悪魔を追いはらう役をつとめていた。
 ところが住職がいなくなり、おいおい廃寺となる。
 仁王たちは山を越えて長根に移ってきた。
 悪鬼よ来い!
 目にもの見せてくれようぞ!
 と両足を踏んばって四方を睨みつける。
 その金剛力にみちあふれた勇ましい姿は、いつ動きだしてもおかしくなかった。
 左甚五郎の作ともいわれた。

 長根寺には縁結びの願掛けにくる女(おな)ごが多い。
 女人禁制の黒森さんでは見かけることもない。
 尾玉さまの縁日ともなれば、着飾った女ごたちの色香が境内に満ちる。
 知らずに仁王の気がゆるむ。
 退屈しのぎに女ごの品定めを始める。
 なんだか足の裏がむずむずと落ちつかない。
 そのうち深夜にしばしば出歩くようになった。
 ありあまる金剛力をもてあましていたのだ。
 閉伊川を渡っては小山田や田鎖に行く、花輪に行く。
 とうとう一体の仁王がかよっている女ごがみごもった。
 夜遊びに歩きまわっているのもばれた。
 噂が広まって、「夜這い仁王」と呼ばれた。
 和尚はにがりきって、仁王たちが出歩けないようにした。
 法力をこめたカスガイで、しっかりお堂に足止めしたのだ。
 仁王の子をみごもった長沢の女ごは、一貫五百もある大きな男わらすを産んだ。
 和尚が黒雲雷八と名づけた。
 どんどん成長し、南部の領内で並ぶもののない相撲取りになって、江戸にのぼった。
 仁王たちはその後、火事にあった。
 カスガイのために逃げだせず、そのまま焼けてしまった。
 境内のすみに、しばらくのあいだ黒焦げのむくろをさらした。
 「お役目をほっぽりだして、遊び歩いた罰だあべ」
 近郷ではもっぱらそう噂しあった。

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by miyako_monogatari | 2009-02-03 06:03
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