■ タコーラの姉妹


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 長根に、タコーラというところがあった。
 そこに、いつのころか、母親と、お玉・お杉というおさない姉妹がいた。
 母親ひとりのかぼそい手で耕す猫のひたいほどの畑に、日々の暮らしを支えるだけの作物はならなかった。
 内職の駄賃も、わずかなもの。
 節句や祭日といっても、ふだんの日と変わりない。
 ところが、ある年の節句をまえに、姉のお玉が言いだした。
 「小豆飯っつうのが食いてぇ」
 哀れに思った母親は、なんとか叶えてやりたいと思案に暮れた。
 親心は切ないもので、メノゴを刻み、キビを混ぜたカテ飯を炊いた。
 アワ粥やヒエ飯しか知らないお玉とお杉は、これを見て、
 「小豆飯だ」
 と喜んだ。
 初めて食べた嬉しさに、遊び仲間にも、つい誇らしげに話した。
 このころ、長根の畑で実った小豆がしばしば盗まれて、犯人がみつからなかった。
 お玉・お杉が小豆飯を食べたという話を耳にした地主は、
 「あの貧乏もんが!
 小豆もつぐってねえ、買えるはずもねえ」
 と、いきどおって代官所へ訴えた。
 役人たちが調べにきた。
 「なんぼ貧乏だぁたって、ひとのものをとるわげがねえ」
 寝耳に水の母親は驚き、親心から小豆飯がわりにカテ飯を子どもに食わせたことを話した。
 「この嘘つきが!
 小豆飯を食ったぁづう子どもが正直だ」
 地主は、ますます怒りだす。
 最初から地主の話にしか聞く耳をもたない役人たちも母親を睨む。
 母親は母親でまた負けずに事実だけをくりかえす。
 らちがあかないのにいらだった役人のひとりが、
 「そんなに強情を張んでぇば、証拠を見せっつぉ!」
 と、かたわらで泣いていたお玉とお杉を引きすえるや、次つぎに腹を割いた。
 ふたりの腹から出てきたのはメノゴとキビばかり。
 小豆なんぞ影も形もない。
 これを見聞きした村びとたちは哀れんで母親をなぐさめた。
 小さなほこらを建てて、お玉とお杉の霊をまつった。
 ほこらに通う母親の姿が、しばらくして見えなくなった。
 タコーラのお玉さま・お杉さまと村人に親しまれたほこらも、いまでは場所さえわからなくなってしまった。


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by miyako_monogatari | 2009-02-02 19:49
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