■ 尾玉さま


a0115014_2255936.jpg 昔むかしのことだ。
 長根の西沢というところに、働きものの百姓がおった。
 一頭のオナゴ牛を持っていた。
 田んぼを耕したり、重い荷物を運んだりと、これまた働きもののベゴっこだった。

 あるとき、ひと晩じゅうお雷(れえ)さまがとどろいた。
 一筋の稲妻が男の田んぼを突き刺した。
 翌朝すっきり晴れあがったので、男がベゴっこに犂(すき)をつけて田んぼを掻いた。
 犂のぐあいを直そうと思って、ふとベゴっこの尻のほうを見た。
 なにか、尾っぽを伝って、田んぼからベゴっこの腹に入ったものがあった。
 それから日増しにベゴっこの腹が大きくなる。
 ――まぐわってもねえのに妙だ。
   尾っぽを伝ってったのが、おがってんだべが?
 そう首をかしげながらも、病気ではなさそうなので男は放っておいた。
 また犂をつけて苗代を打っていると、ベゴっこが産気づき、その場で産みおとした。
 ベゴっこの産んだのは、握りこぶしほどの大きさの、毛につつまれた一個の玉。
 腹の大きくなりぐあいにくらべて、それは小さなものだった。
 ベゴっこの腹は、もとのようにしぼんだ。
 男は長根の山の庵寺に毛の玉をもちこんだ。
 界隈きっての物知り和尚にも正体はわからなかった。
 それでもこう言った。
 「おまえは正直で働きものだし、ベゴっこもめんこがる。
 だから、仏さまのお慈悲が毛玉になって、この世にあらわれなさったのじゃろ」
 男はベゴっこの産んだ毛の玉を和尚にあずけた。
 和尚は毛玉を尾玉さまと名づけた。
 村の衆の合力をえてお堂を建て、ねんごろにまつった。
 山号を玉王山とし、寺も正式に長根寺を名のった。
 ご利益はすぐにあらわれた。
 夏のヤマセが薄らぎ、秋には閉伊川に鮭がのんのんとのぼってくる。
 ケガヅ(飢饉)の不安は遠ざかった。
 長根の山を北に越えた山口の里に、信心深い娘っこがおった。
 立たなくなった父の足腰が治るようにと庵寺に願をかけた。
 お堂普請には山を越えて毎日やってきた。
 尾玉さまが安置されると両のたなごころにつつんでみた。
 尾玉さまは温かく、娘っこのてのひらのなかで金色に光る。
 家に帰った娘っこは、すぐにその手を父親の腰に手をあてがってみた。
 すると、足腰を生気がつらぬいて立ちあがれるようになった。
 霊験あらたかな尾玉さまのおかげで長根寺も立派になった。
 本堂が火事にあっても焼けずに、尾玉さまはいまも御玉堂に安置されている。


                 宮古 on web
[PR]
by miyako_monogatari | 2009-02-01 19:45
<< ■ 尾玉さまと姫さま ■ 髪長姫 >>