■ 髪長姫


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 昔むかしのことだ。
 長沢に、オオトオという古くからの家があった。
 そこに十四、五の娘っこがおった。
 この娘っこ、三月三日の大潮に、東の浜さ潮干の遊びに出はったまま戻らなかった。
 「海の神さまのとこさ、行ったんだぁべ」
 家の人がどうは泣く泣く観念して、三月三日を命日に決めでだった。
 三年たった。
 ちょうど三月三日、命日のおとむらいをしてだとこさ、娘っこがヒョッコリ帰ってきた。
 家の人がどうは喜んだ、驚いた。
 娘っこはみごもってだった。
 腹の子の父親は、どごのだれだが、娘っこは、なんにも喋らなかった。
 月満ちて、めんけえ女ごわらすが産まれた。
 女ごわらすには長い髪の毛がおがってだった。
 年ごろになったら髪の毛はますますおがった。
 洗ったら庭さきの松の枝にかけ、干して、くしけずって、大事にしてだった。
 きれえな娘っこは、村の人がどうから、髪長姫と呼ばれるようになった。
 そのころ、京の都で帝(みかど)が花見をしてだった。
 気がついたら枝に長い長い毛っこがかかってる。
 長すぎて人間の毛っことも思えない。
 そこで、占いの博士を呼ばって尋ねた。
 「これは、なにものの毛か」
 博士は、女ごの髪の毛、と卦を立てる。
 帝は、また訊いてみた。
 「女ごは、いずれのものか」
 さすがの博士も、これはわからなかった。
 「ならば、その女ごを捜しだせ」
 というので、臣下のものどもが東へ西へと旅立った。
 東の国ぐにをまわっていた臣下の一行が、山田がら宮古さ通じる峠にさしかかった。
 そこで、お触れを出した。
 「何日正午から猿楽をもよおす。
 身分を問わず見物を許す。
 ただし女人に限る」
 一行は猿楽という演芸をやって人を集めてだった。
 その日になったら近在の女ごがどうが峠へ押しよせた。
 京の都からきためずらしい演芸だもの、ばあさんもわらすも、ひと目見ようとして集まってきた。
 長沢のオオトオの髪長姫も、そのなかに交じってだった。
 長い髪を桐の箱っこに入れて背負った髪長姫は、すぐに猿楽の一行の目にとまった。
 さっそく髪長姫は京の都へ連れてゆかれ、宮廷にかしずいた。
 猿楽が演じられた小山田の峠は、猿楽峠と呼ばれるようになった。
 家の人がどうは、お堂を建てて、髪長姫を海女(あま)の神さまとしてまつったっつう話っこだ。


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by miyako_monogatari | 2009-02-01 11:14
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