■ 牛方と青鬼


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 若(わげ)え牛方が、一ツ目の化けもんから逃げだした。
 そうして山の奥さ入ってった。
 森のながさ、ぽつんと家の明かりが見えだった。
 「おら、一ツ目から逃げできた。
 助けでけろ」
 そう叫んで戸をドンドンど叩いた。
 ぺえっこ開けた戸のあいだから、娘っこが顔を出した。
 娘っこは声をひそめて、こう喋(さべ)ったった。
 「こごは青鬼のすみかだっけぇ。
 はやく逃げたほうがええ」
 娘っこは海べりの村から青鬼にさらわれできたぁのす。
 逃げだして捕まっと食われてしまう。
 んで、逃げるごどもなんねえでいだぁのす。
 牛方は迷ったった。
 んだども、なんだかドスドスど足音が近づいてくる。
 とにかく娘っこさ頼んで家さ入れてもらったのす。
 娘っこは急いで宝のつづらのながさ牛方を隠した。
 じきに青鬼が家さ帰ってきた。
 そしたら鼻をひぐひぐどうごめかせて嗅ぎまわる。
 「なんだが人くせえ、人くせえ」
 んだども、娘っこのほか、だれもみつかんねえ。
 青鬼は部屋の奥にある蓮華の花っこを見だ。
 それは、人がいっと、赤い血の色をした花っこを咲かせるのだった。
 ひとりいっと、ひとぉつ。
 ふたりいっと、ふたぁつ……
 「ふたぁつ、花が咲いでんが。
 なんでだ?」
 青鬼が言う。
 娘っこは腹をさすりながら答えた。
 「おらの腹んながさワラスがでぎだんだ。
 ワラスの分も咲いだんでねえべが」
 青鬼は喜んだ。
 「それはめでてえ、それはめでてえ」
 そう言いながら、座りこんで酒をがぶがぶ飲みはじめた。
 そのうち、ぐでんぐでんに酔っぱらった。
 ごおごおど、でっけえいびきをかきだした。

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 娘っこは牛方をつづらから出すと、ぐっすり寝込んだ青鬼のそばから刀をとって牛方に渡した。
 牛方は両手で刀をふりかざして青鬼の首ねっこに斬りつけた。
 そうして宝のつづらぁかついで、娘っこの手ぇとって、青鬼のすみかを出た。
 海べりの村まで帰りついたふたりは、夫婦になって仲よく暮らしたっつう話すっこだ。

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by miyako_monogatari | 2009-01-31 17:57
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