■ 牛方と一ツ目


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 昔(むがす)むがす、若(わげ)え牛方がいだったぁ。
 牛方っづうのは、ベゴっこで荷物を運ぶ人のごったあな。
 あるどぎ、この牛方が、海べりの村がら、山むごうの町めざして出がげでったった。
 ベゴっこの背には、ユワス(鰯)の荷をつけでだった。

a0115014_5311161.jpg 日が暮れできたんで、川のそばの、でっけえ木の下に、むしろを敷いで野宿するごどにした。
 夕飯にユワスを食うぺえど焚ぎ火で焼いでだった。
 ――どすんどすん
 なにが地響きがする。
 ――なんだあべ?

a0115014_6122649.jpg そう思ってだら、闇のなががら、真っ赤な一ツ目を光らした大男が、ヌゥッとあらわれだ。
 そうして、焚き火のそばに、どっかり座りこんだ。
 いいぐあいに焼げだユワスに、毛のはえだ手ぇ伸ばすど、むしゃむしゃ食いはずめだ。
 ユワスを平らげっと、真っ赤に光る一ツ目で牛方をにらむ。
 「もっとけろ。
 もっとけんねぇば、おめえを食うが」
 牛方は、牛の背がらユワスの荷を降ろして、みんなけでやった。
 すると、一ツ目は生のユワスを、そのまんま平らげる。
 「もっとけろ。
 もっとけんねぇば、おめえを食うが」
 こんどは木につないでおいだベゴっこをけでやった。
 すると、でっけえベゴっこも平らげでしまう。
 「もっとけろ。
 もっとけんねぇば、おめえを食うが」
 牛方は逃げだすべえどした。
 「なにが食うもんを探してくっけえ」
 一ツ目は、牛方が逃げねえように、腰さ長(なげ)え縄を結つけだ。
 そうして、焚ぎ火のそばさ寝っころがって、とぎどぎ引っぱっては、牛方がいだがどうだが確かめだ。
 川原まで行った牛方は、石に縄をくぐりつけだ。
 一ツ目が縄を引っぱってみだ。
 じゃぶじゃぶ音がする。
 川んながで石が転がってだった。
 んだども一ツ目は、牛方が川の魚をとってるもんだどべえり思ったった。
 そうして、
 ――魚ではものたりねえ。
   戻ってきたら、こんどこそ牛方を食っちまうべえ。
 そう思って、よだれを呑みこんでだった。
 牛方は、そのあいだに、ずんずんど山の向ごうさ逃げでったどさ。


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by miyako_monogatari | 2009-01-31 17:51
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