■ 潮吹き穴


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 「なぁ~に、てぇ~すたごだぁねえ」
 なに、たいしたことはない――
 ひかえめに、そう言う宮古の人間は多い。
 潮吹き穴のことだ。
 潮吹き穴は浄土ヶ浜の北方。
 浄土ヶ浜からも、ちょっと遠くに見える。
 島めぐりの遊覧船に乗れば、すぐ近くから見物できる。
 正式の名まえは「崎山の潮吹き穴」。
 れっきとした国の天然記念物だ。
 潮吹き穴と呼ばれるものは世の中に数かずある。
 けれど、国の天然記念物に指定されているのは、宮古は崎山の潮吹き穴だけだ。
 「宮古の潮吹き穴は日本一」
 そう国が保証しているのだ。
 なんにでも欠点はある。
 潮吹き穴は、海がおだやかだと、あまり潮を吹かない。
 いい日よりに誘われて見物にでかけても、いきおいよく吹き上げていないことが多い。
 海が荒れれば話はちがう。
 30メートルだって40メートルだって吹き上げる。
 そんなときにかぎって観光客はいないものだ。
 昔むかし、宮古の潮吹き穴は、いまより何倍も高く潮を吹き上げていたそうだ。
 「海流が――海のなかの流れが変わったせいだろう」
 そういう説がある。
 こんな話ッコも聞いたことがある。
 話ッコだから、つくり話に決まっているが……

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 ――「潮吹き穴には困ったぁもんだ」
 まわりの村の人たちは頭を抱えた。
 潮吹き穴は、盛大に潮を吹き上げている。
 だいじな畑が潮をかぶって実りがよくない。
 どうにかして、潮を吹かないように、できないものか?
 そう考えた村の人たちは、穴に石を放りこんでみた。
 たいがいの石は、潮といっしょに吹き上げられてしまう。
 吹き上げられないように、だんだんと大きな石を運んで投げいれた。
 ほとんど効きめがない。
 どうやら、穴の下には、空洞が――大きな洞(ほら)が、あるらしい。
 それでも大きな石、大きな石と選びだしては運んだ。
 どんどんどんどん放りこんだ。
 そのうち、とうとう、さしもの潮吹き穴も、おだやかな海の日には、あまり潮を吹かなくなった。
 ひゅうひゅう
 ごうごう――
 洞に渦巻く波の音、吹きだす風の音は、よく響く。
 日本一の潮吹きを見ようと、はるばる遠くからやってきた人たちは、がっかりした。
 そうして「ホラ吹き穴」と呼んだ。

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by miyako_monogatari | 2009-01-29 06:37
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