■ オスラサマ


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 オスラサマ、知っておれんすべ?
 桑(か)の木の棒きれさ、布きれを何枚もかぶせだような、ジンジョウ(人形)す。
 遠野べえりでは、ねえ。
 宮古さも、おれんすが、オスラサマは。
 娘っこのど、馬っこの顔したのど、あってね。
 あれには、こんなぁわげが、あんだっつうがねんす。

 ――いづの頃だべが?
 とにかぐ、昔(むがす)むがすの、こった。
 在郷(ぜえご)のほうさ、おったぁど。
 お父(と)ぉど、娘っこど、馬っこど、おったぁど。
 娘っこは、めんこがった。
 馬っこも、よぐ稼(かせ)いだ。
 娘っこど馬っこど、仲がよくてねんす。
 寝るどぎは、いっつも、くっついで寝でだった。
 ある晩げ、娘っこど馬っこど、とうとう夫婦になった。
 気がついだお父ぉ、怒(おご)った怒った。
 つぎの日には馬っこ、見えなぐなった。
「どごさが、行ったべぇが?」
 娘っこが聞いだ。
 お父ぉは喋(さべ)った。
「桑の木さ、吊った」
 娘っこ、裏庭の、ふってぇ桑の木さ、行ってみだ。
 馬っこ、死んでだった。
 娘っこ、泣いだ泣いだ。
 お父ぉは、まだ怒った。
 マサガリでもって、馬っこの首ぃ、切りおどしたぁもんだ。
 そしたらす、馬っこの首ぃ、フウワリど、浮ぎ上がった。
 娘っこは、バッと、馬っこの首さ抱きついだ。
 そのまんま空さ飛んでいって、帰ってこながったぁど。
 
 ――そうではねえ。
 馬っこの首ぃ、切りおどしたんでは、ねえ。
 馬っこの皮ぁ、はいだんだ。
 娘っこは、その皮さ乗さって、飛んでったんだ――
 そんな話すっこも、あっともす。
 とにかぐ、めんけぇ娘っこも、いんなぐなったぁのす。
 お父ぉは、泣いだぁ泣いだぁ。
 ある晩げの、こった。
 娘っこが、お父ぉの夢枕さ、立った。
「お父ぉ。
 春になったらねんす、お父ぉ。
 飼い葉ぁ入れどぐ槽(ふね)んなが、見どがんせ。
 馬っこの顔した虫っこ、出でくっけぇ。
 その虫っこさ、桑の葉っぱぁ、食(か)せどがんせ。
 その虫っこ、大事に大事に、かでどがんせ」
 春になった。
 お父ぉが、飼い葉ぁ入れどぐ槽(ふね)んなが、のぞいで見だ。
 馬っこの顔した虫っこ、いっぺぇ、いだった。
 それさ、桑の葉っぱぁ、食せだ。
 大事に大事に、かでだっけぇ、繭(まゆ)んなった。
 んで、糸を繰(く)って、町で売ったぁのす。
 そうやって、ひとりで暮らすてだった。
 ふっと、寂しぐ、なったんだぁね。
 あるどぎ、桑の木の枝っこ、切ってきた。
 ジンジョウ(人形)を、こっせぇだ。
 ふたぁつ、こっせぇだ。
 娘っこど、馬っこど。
 寒(さん)ぶぐねえようにど、べべ着せで、神棚さ上げで、毎日おがんだぁのす。
 それが、オスラサマの始まりだ、っつう話すっこだ。
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by miyako_monogatari | 2009-01-28 06:19
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